飛ばない蝶は、花束の中に
「お話中…失礼します」
マスターは薄い焼き菓子をテーブルに置きながら、私に軽く会釈をすると、雅に。
「今日は、お二人だけですか?」
と、やや心配そうに訊いた。
「…大丈夫です。ちゃんと言ってきましたから……」
「そう…ですか?…では…明るいうちに帰らないといけないですね」
にこりと、口髭をうごめかせたマスターはすぐに立ち去ったけれど、気懸かりそうに眉を寄せていて。
膨らむ、不安。
ちょっと、待って。
雅は…どうしてこんなに心配されているの?
そりゃ、明るいうちに帰るつもりではいるけれど。
何も夜遊びするつもりなんか、なかったけど。
小学生じゃあるまいし。
『ひとりで出してやれない』
って。
お兄ちゃん、どうして?
バイト先にまで、どうしてそう、言ってあるの?