飛ばない蝶は、花束の中に
「雅、石鹸、置いとくからな」
「うん、ありがとうございます」
「深雪」
お兄ちゃんが、石鹸?
石鹸買いに行ってたの?
……なんか…似合わな…
「深雪?」
「はっ…い!」
薄紙にくるまれた、高そうな石鹸を2つ手に持ったまま、お兄ちゃんは。
こっち来て手を洗え、と私を呼んだ。
“雅”は、すぐそばで、小さな牛乳パックのような物を冷蔵庫にしまい、ガラスの器に入った、クリーム色の何かを取り出していて。
私はその“雅”が冷蔵庫を開けるためらいのなさに、目眩がしそうなほどに。
嫉妬、した。
目を離した隙に、変な虫が付いた。
私のお兄ちゃんなのに。
こみ上げる、怒りのような、焦燥のような思いは。
薄紙にくるまれた石鹸を棚に置き、さっさと手を洗い始めたお兄ちゃんが、濡れた手で渡してくれた石鹸の匂いに、和らいだ。