飛ばない蝶は、花束の中に
むっつり髭の彼が、帰り際に再び私に丁寧に謝罪を述べて。
くれぐれも、連れ出すような事はしないでくれ、と。
酷く真剣に小さく言うのに、頷いた。
私だって、雅が。
“外出禁止”なんじゃなくて、雅自身の問題で、外出困難だと知っていれば、無理言わなかったと思う。
青い蝶の髪飾り。
雅を、引ったくるように“タカノ”から引き剥がす。
やっぱり私にも従順な雅が、戸惑ったような顔をするも、私と一緒に部屋に戻ってきた。
「蝶、つけて貰わなくて、良かったの?」
手に取った髪飾りをしげしげと見つめた雅は、綺麗な青ね、と嬉しそうに笑うけど。
そういえば、お兄ちゃんは私にだけ買ってくれた、なんて。
何となく浸っていた優越感も、そんな顔で笑まれたら霞むじゃないのよ。
「“タカノ”になんか、髪、触られたくないもの」
雅に対して色々と、悪いとは思うけれど。
私は青い蝶の髪飾りを、大事に受け取り、握りしめた。