飛ばない蝶は、花束の中に



おかしい、な。

雅は常に受け身で。


お兄ちゃんの“メイド”だと言い張るくらいには、従順で。

あてがわれた“タカノ”にも、従順で。

むっつり髭の彼は、お兄ちゃんについて居る訳なのに、過剰なほどに気にかけて。



我が侭を言って困らせているようでもないのに、雅が動くと、全員の動きが変わる。

私も、含めて。



確かに。
確かに雅は、可愛い部類の容姿だとは、思う。

綺麗に切り整えられた髪は綺麗だし、厚めの唇で小さな口は、笑顔を浮かべなくても、ちょっとセクシーな気も、する。


だけど。
だけど、別に飛び抜けてる訳でもないのに。



“タカノ”はいい。

このサディスティックな男は、雅を玩ぶ権利を、お兄ちゃんから貰って喜ぶ程度の奴だ。

雅の気持ちなんか、知ろうとも思わないか、知っていても無視できるんだと思う。




だけど、お兄ちゃんは…?




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