飛ばない蝶は、花束の中に



「雅ちゃんよりずっと、呑まれやすいね」


くすくすと笑う“タカノ”は、ずっと我慢していたのか、ちっとも笑い止まなくて。



「……………」


私は、じわじわと湧き上がる羞恥心と、安堵感に、きっと真っ赤な顔になっていたと思う。




「気をつけないと」

俺みたいな奴に、せっかくの処女、持って行かれちゃうよ。



なんて。
あんまり笑うもんだから。

思わずカッとなって、手を振り上げた。




「おっ…と、毎回殴られるのは嫌だな」


笑ってるくせに、私の手首を掴んだ“タカノ”は、くるりと私の体を鏡に向かわせた。




「うん、綺麗だ」

深雪ちゃんの言い分は、仕事終わったら、ゆっくりうちで聞くから。

ごめんね、次の予約まであと10分なんだ。

気をつけて帰ってね、なんて。




私は呆気なく、裏口から追い出されちゃったけど。

手まで振られちゃって。


目の前でドアを閉められてようやく。

我に返った。




…私。

……私…さっきの…!



ファーストキス…だった!!






< 226 / 328 >

この作品をシェア

pagetop