飛ばない蝶は、花束の中に


引きちぎれた綿。

固く詰め込まれた綿は、あいた穴から溢れやしなかったけれど、切れた太い糸は、プチプチと音を立てて何針分も、切れた。


弾けた果実のように。

中身を押さえきれなくなった表面が捲れて、綿は。

こんもりと、アザラシの腹をグロテスクな物に、変えた。





「…私を……雅だと思えば?」


顔を隠して?
目を隠して?

声も上げずに、呼びもせずに。


そんな冒涜って、許されるの?




手が、震えた。

言われた意味を、考えれば考えるほどに、怒りと悲しみが渦を巻く。


あんな仕事の仕方をしていた“タカノ”に、キスをされた事よりも、ショックかも知れない。




雅、雅、雅。
お兄ちゃんも“タカノ”も。


…雅ばかり。




< 240 / 328 >

この作品をシェア

pagetop