飛ばない蝶は、花束の中に


部屋のドアが開いて。

髪を掻き上げながら、お兄ちゃんが。
来い、と。



“タカノ”がどうなったのか、判らない。

雅がした主張が、“タカノ”をどうしてしまったのか、判らない。


ただ、すっかり静かになってしまったリビングからは、なんの音もしなかったし、“タカノ”の部屋も、静かなままで。

お兄ちゃんの髪が、少し乱れて、唇が切れただけの、事。




“鷹野さんは?”と。

喉元にまで出た事が、はっきりわかる雅も。


雅が、私を気にかけつつも、穏やかには見ていない事を知った私も。

おとなしく、怯えたように。

お兄ちゃんに促されるままに、車に乗るしか、出来なかった。




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