飛ばない蝶は、花束の中に



「ねぇ、雅」

「はい」



雅は、あれから鷹野の部屋に、泊まりきり。

私も、引き留める理由が無いことを知ったから、遠慮なく、雅の部屋をひとりで使っている。


私の引きちぎった白いアザラシのぬいぐるみは。

決して器用には見えない針さばきで、雅が縫い合わせて。



なんとなくグロテスクなのは気のせいか? と、引きつった顔をしたお兄ちゃんに、気のせいです、と。
押し付けるように、手渡していた。




「この前の…レシピ、ちょうだい」

「この前?」


ほら、やたら家中にお酒の匂いが充満した時の。




「マルガリータのパイ?」


雅は、よくケーキやパイを焼く。

料理が上手で。


手が込んでいる訳ではなさそうだけど、濃くて甘くて、いい匂いの。

色々なものを組み合わせた、綺麗なものを、作る。




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