飛ばない蝶は、花束の中に


「あ」


特別にブレンドしてもらったとかの、“タカノ”の持ち帰った紅茶が、私の前にも置かれた。

酷い態度を取っているのは、重々承知だ。

どうにも…お兄ちゃんを盗られたような気がして、ふつふつと怒りが湧く。


今も。

“雅”が、音を聞き分けた子犬のように顔を上げて、再び玄関に向かいかけ。

そこではたと、私を振り返った事に、イライラはつのった。




「…………凱司さん、のはず」


遠慮がちに私に言った“雅”は、再び椅子に戻って来た。


いつもなら、きっと、飛び出して迎えているんだろうと…思う。




私、何をしに、来たんだっけ。なんだか、悲しくなってきた。


お兄ちゃんに恋い焦がれて。

ひとりでは乗ったことのない、飛行機に乗って。


道に迷って遅くなって。


日本人なのに英語で話し掛けられて。




ただ、お兄ちゃんと一緒に居たかっただけなのに。



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