飛ばない蝶は、花束の中に
それから幼稚園のお迎えは、大半がお兄ちゃんが来てくれるように、なった。
母親は多分、仕事を始めたんだと、覚えている。
計算すると、お兄ちゃんは高校生だったような気がするけれど、毎日決まった時間に遅れることなく、来てくれた。
他の母親に混じって、その長身と、容姿の華やかさとは、私の虚栄心を満たし、私は必要以上に見せつけるように、お兄ちゃんに甘えて。
目一杯手を伸ばしても、手を繋げないのを良いことに、いつもいつでも、抱き上げてもらっていた。
その頃毎日見た、視界の開けたような高い世界は、お兄ちゃんと同じ世界。
片腕で軽々と支えてくれていたお兄ちゃんの金髪に指を絡め、耳のピアスに触れながら、その日にあった事を、ドイツ語でまくし立てるように取り留めもなく、喋るのを。
あとから思えば、お兄ちゃんは苦々しく思っていたかも知れなかった。