飛ばない蝶は、花束の中に
確かに、お兄ちゃんに“抱っこ”して貰うには、私は大きくなりすぎたかもしれない。
でも。
だったら。
どうやって甘えたらいいの?
“雅”もいる。
“タカノ”もいる。
お兄ちゃんの指先で再びつまみ上げられて、くるくると回される花は、“タカノ”の言ったように、どことなく“雅”に似ていて。
“タカノ”の彼女だという“雅”が、お兄ちゃんのことも好きだなんて。
そんなの。
「どうしてあの子はここに居るの?」
「雅か?」
あまり、お前は気にしなくていい。
と、僅かに困ったように笑みを浮かべたお兄ちゃんは、近付いた私の腕を、そっと掴んだ。
「アレに手を出すと、鷹野に噛まれるからな」
くく、と笑うお兄ちゃんの手に引っ張られるまま、その胸に抱き留められて私は。
あんなに小さかったのになあ、と。
ようやく聴けたお兄ちゃんの、懐かしげな声に、泣きたくなるほどに、安心した。