飛ばない蝶は、花束の中に
机の隅に、いちごミルク色の、花。
ヨーグルトの瓶のような厚いガラスの容器に、三輪。
もっとたくさん貰っていたから、小分けにしたのかも知れない。
“雅”の机。
“雅”のイスを引いて、そこに座ったお兄ちゃんは、私とお揃いの目を、じっと、私に向けた。
「…ドイツに帰りたくない理由は?」
「……」
お兄ちゃんと、離れたくない。ただ、それだけ。
「ずっと離れてたじゃないか」
だから。
だからこそ。
これ以上の距離は、嫌。
「まぁ……しばらく俺が預かる事は、連絡しといた」
明日で構わないから、一度母親に電話しとけ。と。
「ママに、……居場所、教えちゃったの?」
「当たり前だ。急に連絡が取れなくなったら、どれだけ心配するか、想像してみろ」
お兄ちゃんはそう言うと、いちごミルク色の花を一輪、水から抜き取り、すぐに、戻した。