飛ばない蝶は、花束の中に


“雅”が、青白い顔で、おはよう、と。

明らかに無理に笑った。




「ちょっと…あんたどうし…」


朝一番で、さっさとちょこっと謝っちゃおうと思った私は、“雅”の余りの顔色の悪さに、思わず手を伸ばした。




「大丈夫、ちょっと…疲れただけ」

「つ…疲れたって……あんた…寝てないの!?」



“雅”はもしかして、自室じゃないと眠れないんじゃないか、と、少し申し訳ない気持ちになった私は、その肘を、掴んだ。




「あ、ううん、大丈夫。朝ごはん、今作るね。コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」


にこ、と首を傾げて訊く“雅”の、そのまぶたすら透けている気がして、私はそのまま、腕を引っ張った。


突き飛ばすように椅子に座らせて、その後は………。




どうしたらいいのか解らない。





「………あ、の…」

「……なに、作るの?」

「え?」

「朝ごはん。なに作るの?」



サンドイッチ、作ろうと……と、眉を下げた“雅”が、もしかしてサンドイッチ嫌い?と、指を口許に当てて、首を傾げた。





< 60 / 328 >

この作品をシェア

pagetop