飛ばない蝶は、花束の中に
“雅”が、青白い顔で、おはよう、と。
明らかに無理に笑った。
「ちょっと…あんたどうし…」
朝一番で、さっさとちょこっと謝っちゃおうと思った私は、“雅”の余りの顔色の悪さに、思わず手を伸ばした。
「大丈夫、ちょっと…疲れただけ」
「つ…疲れたって……あんた…寝てないの!?」
“雅”はもしかして、自室じゃないと眠れないんじゃないか、と、少し申し訳ない気持ちになった私は、その肘を、掴んだ。
「あ、ううん、大丈夫。朝ごはん、今作るね。コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」
にこ、と首を傾げて訊く“雅”の、そのまぶたすら透けている気がして、私はそのまま、腕を引っ張った。
突き飛ばすように椅子に座らせて、その後は………。
どうしたらいいのか解らない。
「………あ、の…」
「……なに、作るの?」
「え?」
「朝ごはん。なに作るの?」
サンドイッチ、作ろうと……と、眉を下げた“雅”が、もしかしてサンドイッチ嫌い?と、指を口許に当てて、首を傾げた。