暗黒の頂の向こうへ
「ご迷惑をおかけ致しました。 自分の志だけでも、作戦に繋いで下さい」
リーダーZはWを優しく見つめ、小さくうなずいた。
その瞬間、Wの座席はゆっくりと空席になっていった……。
テログループのメンバー全員の心に、変化が訪れる。 Wの存在、記憶がゆっくりと消えていく。 しかし、リーダーZは分かっている。
以前と同じ感覚が蘇る。 メンバーの命を守る為に、犠牲にした人物の事を。 同じように、部下に殺しの命令を出した事を。 消えて欲しくない記憶が、消えてしまった事を。 だが、はっきりと気付いている。 その人物が、自分の息子であった事を。
 「同士、大儀に犠牲は付き物だ。 時空警察の犬どもが、ここを嗅ぎ付けた。 30秒後に上り車両と交差する。
その車両の座標は、X軸12267、Y軸88765、空間移動する。
交差時速1600kmの車両移動だ。 一歩間違えば即死する。
各自、逃走経路設定。 車両移動後、散会。 地球に明るい未来を」

そのころ時空警察第一チームが、痕跡を残したテロメンバーの磁気反応を追跡中だった。
 「追跡磁気反応ロスト、検索できません。 正確な座標が分からず、地上2メートで高速で移動する車両に、直接時空ダイブは危険です」
時空警察は、追っていたテログループメンバーWの磁気反応が消え、間近で検挙を断念した。
機内の壁を蹴りつけ、グレンが悔しがる。
「くそー。 イエローが生意気にターゲットの存在を消しやがった。
絶対に俺が、全て削除してやる」
しかし、テログループの必死の逃走に、驚きを隠せないでいた。
時空警察本部内での状況報告会議

捜査官報告。
「現在も、テログループの不法時空進入が多発しています。
これは何か、大きな時代の変更を企む前ぶれかと思われます。
先日の日本人テログループは、時空警察第四チームの追跡をかく乱し、原爆投下地点から逃走。 現時点での推測ですが、広島、長崎の原爆投下阻止を、企んでいるのではないかと思われます。
今後、広島、長崎の原爆投下ポイントの警備を強化します」
時空警察は、原爆投下前のダイブアウトポイントの割り出し、日本人のテログループメンバーの検挙に全力を上げ、双方の争いは激化していった。
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