君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「本間(ほんま)さん、働き者…」
「あそこ今、宣伝部全体が気合い入ってるよね、追加予算も出たし」
高木さんがキーボードを叩く音が、小気味よく響く。
「夏の商品が当たったから、この勢いを逃したくないんだろうね」
「当然ですよね」
返信を打ちつつうなずいた。
勢いを逃したくないのは、私たち広告代理店だって同じだ。
ここは、あるメーカーのプロモーションを専属で手がける営業部署。
部内は大きくふたつのチームに分かれている。
商品やブランドの広告戦略を考えCFを作る『製品チーム』と、テレビや新聞、雑誌、イベントなどのメディアを駆使して広告をプランニングする『メディアチーム』。
私はそのメディアチームの一員だ。
イベント、雑誌、最近はほとんど取り扱いのないラジオも、時には担当する。
チームの営業員は10人にも満たない。
時期にもよるけれど、仕事は正直かなりハードで、文字どおり息つく暇もなく、でもやりがいは充分。
私は社内外からのメールに次々返信をして、必要な事項を手帳に書きとめた。