君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「じゃあ、どうして課長ではなく、新庄さんにお願いに来たんでしょう」
「知るか。無理な注文だから、立場の低い人間の方が頼みやすかったんだろ」
そうかなあ。
課長の方が絶対お願いしやすいと思うけど、キャラ的に。
「どうして、元カノとか言われてるんですか?」
「それもわからん。ある時から急に、そうネタにされるようになったんだ」
「仲がよかったわけでもなく?」
「わけでもなく」
もしかして、あの露骨な新庄さん狙いの態度にも、気づいていないんだろうか。
「どこのバカが、そんな適当なこと言い出したんだかな」
「いいじゃないですか、美人だし」
「自分もたいして変わらないだろ?」
口に運んでいたごはんを落としそうになった。
まさか新庄さんが、そういう軽口を叩くなんて。
叩いた当人はといえば、今の発言を気にするでもなく、マニュアルを読みながらお茶を飲んでいる。
煙草が吸えなくて手持ち無沙汰なんだろう
お客様の前に出るイベントでは、仕方がない。
これは…たいして深く考えずに言ったんだな。
なんだ、と思いつつも、悪くないと言われたことを素直に喜んでおくとする。
単にどの女も同じに見えるって意味の可能性もあるなと気づいたけれど、心はなんとなく浮かれていた。
元カノじゃ、ない。
今度会ったら、彩に教えてあげよう。