君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

ふいに彩が、じっと私の顔を見た。



「電話、代わってほしかった?」

「えっ」

「お前だけ新庄さんと話しやがって、みたいな顔してるから」



自分でも驚くくらい、かっと顔に血が上った。


耳まで熱い。

たぶん私、今、真っ赤だ。



「…あれ?」



半分冗談だったらしい彩は、目をぱちくりさせている。

沈黙が下りた。



「話したいことあるなら、聞くけど」

「話したいことというか…」



話したくないことというか。


聞いてもらえば、なにか自分の中で整理できるだろうか。

ストーカーのこと、堀越由夏のこと、新庄さんに関する、いろんなこと。


いったい何から話したものか、と思案した。




机の上はビールの空き缶で埋めつくされ、ワインの瓶も転がっている。



「なるほどねー、知らないうちに、いろいろあったんだね」



改めて話すと、本当にいろいろあったことに驚いた。



「結局、鬼の新庄にハマっちゃったかあ」

「私そんなこと、言った?」

「んんー」



言いたいことを言うようでいて如才ない彩は、核心を突くのを避けてくれている。

けれど私もいい加減、気がついていた。

私の新庄さんへの思いは、ただのファン心理を超えている。



「認めたくない…」

「まあまあ」



同じ職場で、同じチーム。

会社では仕事に専念したいのに、これじゃどうなることか。

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