君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「潜在要素は、充分あったわけか、私」
「そういうことだね」
ため息が出た。
これから先が思いやられる。
とりあえず明日は新庄さんと顔を合わせずに済むと思うと、寂しい反面ほっとする。
代休、どうしようか。
言われた通り、ここらでまとめて休むのも悪くないかもしれない。
「それより恵利、引っ越したら?」
「私も考えてた」
それで事態が好転するのかわからないけれど、なにもしないよりはましなはずだ。
ストーカーの件では、彩は火を噴く勢いで怒った。
そんなクソ男は生きている価値もないけれど、逃げる努力をしないなら、あんたもバカだと私を罵倒した。
その通りだと思う。
「警察って手は?」
「結局、解決にはならない気がして」
私もこういうことがあってから少し調べた。
ストーカーへの罰則はごく緩い。
中途半端に警察沙汰にして、かえって恨まれでもしたら、その方が怖い。
それがわかるから新庄さんも、警察のことは持ち出さなかったんだろう。
「郵便物の方は、完璧に犯罪なんだけどね、信書開封罪って」
彩が教えてくれる。
「同じことじゃないかな」
「そうだよねー」
一生刑務所に入っていてくれるというのでもない限り、怖くて、訴えるなんてとてもできない。
でもこんな程度の犯罪で、それはあり得ない。
そもそも証拠として郵便物を保管しておくのなんて、想像するのも嫌だ。
泣き寝入りと言われれば、それまでなんだけど。