カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

――あれ? 場所移動したのかな……。いや、でもあの色だけどこかに移すなんて考えられないし。

見落とすことも考えられないけれど、 念のため……。


赤と黒から始まる陳列を、ゆっくりと上から下へと探し見る。
それでも、あの明るい青が見当たらない。


「な……い?」
「なにかお探しですか?」
「!!」


突然背後から声を掛けられたオレは、驚いて背筋を伸ばして振り向いた。
そこにはよく見る女性の店員が、静かに微笑んで立っている。


「あ……あ、ええと、すみません。オーシャンの、ここに並んでたペンは? ライトブルーの……」
「あ……。申し訳ございません。そちら、メーカーで廃番でして……うちでももう置いてないんです」
「え?!」


戸惑いながら、なんとなくそのペンの所在を聞く流れかと尋ねて返ってきた言葉に心底驚きを隠せない。


――廃番?! ってことは、もう……。


その先を想像して放心する。
いつでも手に入ると思ってたから……。そんな安心感でいたのが、急に手に入らないだなんて、青天の霹靂もいいとこだ。


ペンなんて、どれも同じ。
結局生み出すのは、ペンじゃなくて人なんだから、どのペンを手にしても同じ結果につなげなければダメだろ。


自分でそう言い聞かせるようにしてみても、心はどこか穴が開いたまま。



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