カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―


「一体どういうつもり?! 浜さん激怒していたわけではないけど、それって逆に、怒る価値もないって思われてるのよ!」
「怒ってなかったんですか? よかったぁ」
「どこがいいのよ! 迷惑掛けてるのは変わらないの! それに、こういうことも相談・指摘してもらえないなんて、自分が担当なのに悔しくないの?!」


帰社するなり森尾さんの姿を見つけた私は、人目を気に掛けることもせずにその場で彼女にきつくあたった。

大声ではないけど、私が森尾さんに怒ってるっていうのは部署内の人は気付いてるはず。
けど、入社して8年にもなる私は、ちょっとしたお局様的な存在だから、だれも仲裁になんて入ってきやしない。

でも、たぶん、仲裁に入らない理由のもうひとつは、この森尾彩名の態度もあるのかもしれない。


「『悔しい』? ……うーん、それ、あんまりわかんないですぅ。だって、取引先とはいえ、話が合う人と合わない人がいますしー。あたし、あそこの店長、あんまり得意じゃないんですよねぇ。向こうもそう思うから阿部さんに連絡したんですね!」


こんなことを、悪びれもせずに自分のネイルを眺めながら言う。
そんな“命知らず”な行動をする彼女を、わざわざ助けるまででもない、と周りの人間も思っているのかもしれない。


怒られてるのに、平気な――いや、むしろ笑える神経って、どんななの?


目の前に立つ女が、あまりに自分とかけ離れている人間で、息をするのも忘れて呆気に取られていた。


「あ、じゃあ、あの修理品の件、お願いしちゃってもいいですか? 浜店長もその方がいいから阿部さんにコンタクト取ったんでしょうし!」


本当に、こんなぶっ飛んだヤツっているのね。


「あ。なんなら、担当先、トレードします? あたし、弐國堂がいいなぁ。あそこ、イケメン多いし、店長も優しいし? まぁ、既婚者は範囲外ですけどー」



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