カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

きっと、ジョーク。冗談でこんなことを言ってるのよね。

でも、なに? どこからどこまでが冗談なわけ? ていうか、自分のミスで怒られてる場でよく冗談なんて、しかもそんな笑顔で飛ばしてられるわよね!


ブチン、と堪忍袋の緒が切れる音が全身を駆け巡った。

ただ、もう本当に。今までの私のしてきた努力を笑われてる気がして。

いつまでも気にしている、今日は花柄のネイルをした手をガシッと掴んで力を込める。
驚いて、つけまつげをばさばささせて私を見上げる森尾さんに、躊躇うことなく言い放つ。


「あんた、本当大卒? せっかくイイ頭も使わなかったら台無しね」
「……あんまり頭良すぎてもモテませんよ」
「モテるモテないとかで、お客さんに迷惑かけんじゃないわよ!」


口を尖らせて、まるで子供のような言い草をする彼女に、つい最後は声を荒げてしまった。

グイっと未だに離さずにいる森尾さんの手を引き寄せても、彼女は私から目を逸らしてふてくされた顔をするだけ。


『すみませんでした』とか、そういう言葉がいっこもない。

そんなことにも私は森尾さんへの怒りがまだ鎮火せず、今まで溜まっていたものをさらに吐きだそうとしたときだった。


「……おーい。公衆の面前で言い過ぎ。最後のは廊下まで聞こえてたぞ」


背後から聞こえた声で我に返ると、森尾さんの手をパッと離す。
振り返ると、腕を組んで『やれやれ』と言った顔で私を見る神宮司さんが立っていた。



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