カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
なんでよりによってこのタイミングで!
怒られてる側も恥ずかしいだろうけど、怒ってる側だってそれは同じよ。
だけど、私は恥ずべきことをしていない、と気づいてひとこと返す。
「間違ったことは言ってないですから」
「うーん。でも、とりあえず今はその辺にしといたら?」
困った顔をしながら神宮司さんが言うことに、納得がいかない。
どうしてそんな顔してまでこの子の肩を持つのよ。
――やっぱり、若くて可愛い子が無条件に愛されるものなのか、と下唇を噛んでいたら、横からすすり泣く声が聞こえてきた。
「す、すみません……。あたしがミスしちゃったので……阿部さんは間違ってないんです……」
振り返ると、さっきまでなんにも反省の色を見せずに笑ってた森尾さんが、片手で口元を押さえながら、ぽろぽろと涙を流している。
――信じられない。その涙が演技だと気づいてるのは私だけ?
まさか、こんな状況で涙まで操れるの? 完全に私には分がないじゃない。
だから、神宮司さんも「とりあえず」とか言ったんだわ。
絶句して、当事者であるはずの自分が、森尾さんの“綺麗な泣き方”を傍観する。
すると、俯いていた彼女が少し顔を上げ、声を震わせて言った。
「……あの、すみません。あたし……ちょっと、倉庫に……」
懸命に笑顔をつくる――――フリをして、森尾さんは私の前から走り去り、飛び出した。