カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
要はそう言いながら、ペンを私に差し出す。
確かに、「ぜひ仕事をしたい」と聞いたときに気になってはいた。
だって、仕事を選ぶという噂を聞いていたし、会った印象から自由人な気がして。そんな人が、大きな組織であるうちの会社となにかをする、って面倒だと感じるかなと思ったから。
ゆっくりと手を伸ばし、それを受け取る間に考える。
でも、なにが要にOKさせたのか、見当もつかなかった。
色々と思考を巡らせながら、指先にペンの感触が走ったときに、ハッとした。
「――もしかして……これをうちで作ってる、から……?」
たった、このペン一本が、“KANAME”を動かしたっていうの?
唖然として、ライトブルーのそのペンを持つ要の手は、まさに彼のためのペンにも見え、ペンのための手にも見えた。
特別な、ペン。
こんなに大切にしてもらえるなんて。
私にこんなふうに愛される商品を生み出す手助けが出来る?
答えは――NO。まるで自信がない。
正確に言えば、以前の自分なら、深く考えずに色々と企画にまで口を挟んだかもしれない。
けれど、現在(いま)は――。
「美雪?」
デスクの上の手に視線を落としていた私の顔を覗き込む。
心の内側を見透かされた気がした私は、必要以上に気張った声を出す。
「なんでもないわ!」
一瞬、驚く顔を見せた要は、すぐにいつもの顔に戻る。
そして、私の横に立つと、俯き垂れた私の髪をそっと耳に掛けた。
視界の隅に入る、あのライトブルーが映える、白く綺麗な指。その手が耳に触れた瞬間に熱を帯びる。