カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
「――――もう、これ以上、油売ってられないわ。失礼」
なんとか堪えた涙の代わりに、少しだけ、声を震わせて言った。
もう、要の顔を見ることは出来ない。
いや、正確には、今の私の顔を見られたくない。
きっと、ひどい顔をしているから――。
いつでも、綺麗で自信が溢れる私を見てもらいたい。
それは特別な人だけじゃなく、誰にでも。
だから、こんな嫉妬や不安や悲しみや……ぐちゃぐちゃな感情が表に出てる顔なんて見られたくない。
それが私のプライドだったから。
フローリングのカバンを拾い上げ、要に背を向け一歩踏み出そうとしたときだった。
しなやかな腕が、私の体に絡みつく。そして陽だまりのような温かさを肌で感じる。
冷えていた私には、暑すぎるくらいの温かさが。
だけど、私を後ろから抱き締めるだけでなにも言わない要に、つい本心を晒したくなくて無駄におしゃべりになってしまう。
「悪いけど、歳下には興味ないから。それに、あなたもこんな高飛車な年増、いやでしょう? 選べるほどの相手がいるんでしょうから。私、要みたいに仕事選べる側の人間じゃないし、忙しいのよ。離して」