カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
*
道行く人は、なんのことはない、ただの先輩後輩だと私たちのことを思って見てるだろう。
神宮司さんは私を「阿部」と呼び、私は「神宮司さん」と呼びながら、少し距離を置いて歩いているのだから。
まぁ現にそうだから、正解なんだけど。
「なに食いたい?」
「嫌いなものはありませんから。神宮司さんが好きなものを」
「そういうさりげなく気を遣って遠慮するとことか、阿部らしいな」
「そうですか? 大体の女性はこう言いません?」
「そうだとしたら、今までの俺の女の見る目はなかったってことだな」
靴の音が止んだから、自分も歩くのを止めて顔を足元から上げる。そこには少し後ろを歩く私を、やさしい笑顔で見ている神宮司さんがいた。
「ほんとによかったのか?」
テーブルに設置されている丸い網を挟んで座る。
軽く腕まくりをしながら神宮司さんがいまさらそんなことを聞く。
「私はあと出しジャンケンみたいなこと、言いませんよ。焼肉、久しぶりです」
「ならよかった。俺も久々だ」
今の焼肉屋さんは店内は綺麗だし、臭いもしないし。それにここは完全に個室だし、別になんの不満もない。
熱せられた網に肉が乗せられると、途端にじゅーっと食欲をそそる音と匂いがする。
「私焼きますよ?」
「あ。奉行?」
「『奉行』って……。いえ、こだわりはないです。神宮司さんこそ」
「俺も食えりゃなんでもいい。でも俺が焼くよ。阿部は遠慮しないで食べて」
私が持つよりも、神宮司さんの大きな手で持つと、銀色のトングもなんだか華奢に見える。
丸く整えられた綺麗な深爪。
ぼんやり手元に視線を送っていると、急に目の前に湯気の立ちのぼる肉を差し出されて身を引いた。
「焼けた。皿に乗っけていい?」
「あ……ああ、すみません。あとは自分で出来ます」
「いただきます」と呟いて、お皿に上げてもらった肉を頬張った。
道行く人は、なんのことはない、ただの先輩後輩だと私たちのことを思って見てるだろう。
神宮司さんは私を「阿部」と呼び、私は「神宮司さん」と呼びながら、少し距離を置いて歩いているのだから。
まぁ現にそうだから、正解なんだけど。
「なに食いたい?」
「嫌いなものはありませんから。神宮司さんが好きなものを」
「そういうさりげなく気を遣って遠慮するとことか、阿部らしいな」
「そうですか? 大体の女性はこう言いません?」
「そうだとしたら、今までの俺の女の見る目はなかったってことだな」
靴の音が止んだから、自分も歩くのを止めて顔を足元から上げる。そこには少し後ろを歩く私を、やさしい笑顔で見ている神宮司さんがいた。
「ほんとによかったのか?」
テーブルに設置されている丸い網を挟んで座る。
軽く腕まくりをしながら神宮司さんがいまさらそんなことを聞く。
「私はあと出しジャンケンみたいなこと、言いませんよ。焼肉、久しぶりです」
「ならよかった。俺も久々だ」
今の焼肉屋さんは店内は綺麗だし、臭いもしないし。それにここは完全に個室だし、別になんの不満もない。
熱せられた網に肉が乗せられると、途端にじゅーっと食欲をそそる音と匂いがする。
「私焼きますよ?」
「あ。奉行?」
「『奉行』って……。いえ、こだわりはないです。神宮司さんこそ」
「俺も食えりゃなんでもいい。でも俺が焼くよ。阿部は遠慮しないで食べて」
私が持つよりも、神宮司さんの大きな手で持つと、銀色のトングもなんだか華奢に見える。
丸く整えられた綺麗な深爪。
ぼんやり手元に視線を送っていると、急に目の前に湯気の立ちのぼる肉を差し出されて身を引いた。
「焼けた。皿に乗っけていい?」
「あ……ああ、すみません。あとは自分で出来ます」
「いただきます」と呟いて、お皿に上げてもらった肉を頬張った。