カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

誰かと食事をするのが久しぶり。

一人で食べるのが普通で、別にさみしいとか思ったりはしなかったけど、こういうものは、やっぱり一人じゃ選ばないし食べないからたまにはいいかも。

もぐもぐと口を動かし、次に焼かれているカルビを見ながらそう思う。
向かいの神宮司さんも、ビールと一緒に肉を頬張り、とても美味しそうな顔をしていた。


「美味しそうに食べますね」
「あー! だって、ビールと焼肉! 最高の組み合わせじゃん! 阿部は本当、飲まないの?」


神宮司さんが私の手にあるウーロン茶に視線を落としながら聞く。


「ええ。もしかしたら家でも仕事をするかもしれないので」
「はーん……真面目だねぇ、“美雪ちゃん”は」


“美雪ちゃん”と言われて、瞬時に頭をかすめるたのが要だなんて。
初対面のときに、あいつがふざけて一度そんなふうに私を呼ぶからよ。


携帯が入っているカバンをちらりと見て、あいつのメールを思い出す。
けど、すぐに思考から取っ払って、神宮司さんに向きなおした。


「他にすることもないですから」
「こうやって誰かとメシ食ったりとかも?」
「はい」


「ふーん」となにか考えながら、神宮司さんはまたビールを口に含む。
ゴトッとジョッキをテーブルに戻すと、急に黙って私を見た。

その視線に、私も手が止まってしまってしばらく沈黙する。

そして沈黙を先に破ったのは神宮司さんだ。




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