カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「俺の用事ってやつ」


なんとなく、その「用事」ってやつが、今の自分に最も苦手な話題だということくらいわかる。
だって、絶対仕事関係の話なんかじゃない。

表に動揺を出さないように努めようとしたけれど、どうやら私の瞳が正直に“不安”を浮かべてしまったようで。


「んな構えるなって」


軽く笑いながら神宮司さんがそういうから、思わず息をついた。
それから、焦げそうになっていた野菜を見つけて、それを返しながら自分から口を開いた。


「森尾さんと、仲良くなったようですね」
「え? 『仲良く』ったって……」
「彼女はそう思ってますよ」
「俺は別にそんなふうには思ってないけど」


今度は私が神宮司さんのお皿に焼けた野菜や肉を取り分けた。
なにも乗っていない網の下では、じりじりと赤い火が静かに燃えている。

ジジ……っとその音を聞いて、ゆっくりと顔を上げる。
再び神宮司さんと目が合ったと同時に、彼が片眉を上げて軽く言った。


「ヤキモチ?」


『ヤキモチ』? まさか。
でも、正直面白くないところ。これはヤキモチなの? ううん、きっとそうじゃない。
信頼している先輩が、信頼出来ない後輩とこのままどうになるっていうのがイヤって話。


「違います」
「本当に?」


まるで私の心を試すような口ぶりと眼差し。
何度も頭で考えた、ものすごい高給取りとかじゃないけど、安定してるし人柄もいいという神宮司さんのステータス。

『本当に逃していいの?』と『でも心はまだ、動いてないんでしょ?』という自分の中の葛藤。


手にしていたトングをそっと戻し、姿勢を正して単刀直入に私は尋ねた。


「なぜ、今? 私のどこがいいんですか」



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