真夜中の足音(中編)
駅から家まで、歩いて20分はかかる。

初めは健康のためにと歩いていたが、最近、仕事が遅くなることもあり、自転車通勤に切り替えようか悩んでいたところだった。

駐輪場代をケチって、先延ばしにしていたのを後悔する。

電灯の薄暗い明かりを背後に、細い道を曲がったところで、陽子は急に立ち止まった。
そして、角に立つ電柱を見上げると、その影に身を潜めた。

遠ざかった足音を確かめるためだ。

耳をすますが、そこで自分の荒くなった息遣いに気付き、2回、3回と深呼吸をして息と、頭の中を整える。


きっと、気のせいに違いない。


「・・・・・・」


しばらくそうやって耳を澄ましていても、何も聞こえない。

ホッっと一息つく。

そして、電柱の影でひっそりと息を殺して、聞き耳を立てている自分の姿に、何してんだろ?思わず噴出してしまう。


しかし、その時、


 コツ・・・コツ・・・コツ・・・


  足音。
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