真夜中の足音(中編)
身体中に力が入り、急に背筋に寒気を感じる。
耳を澄ませながら、唾を飲み込む。
ゴクリ。喉が鳴った。
しかし、陽子は、しばらく考えた挙句、このままここに潜むことにした。
仕事でも、要領が悪く、人より仕事が遅い。
みんなは、何も言わないが、そのことは自分が一番感じていた。
そして、たかが足音に脅える自分。
そんな自分が嫌になったのかもしれない。
壁と電柱の間には、側溝があり、陽子が身を隠すには、ちょうど良いスペースだった。
タイトスカートを穿いていたので、壁と電柱に手をつけて身体をささえながら、溝に両足を入れる。
そして、壁に背をもたれさせながら、足音に気を配る。
多少、服が汚れるかもしれないが、ここまできたら、どうしても足音の持ち主がどんな人か知りたくなっていた。
コツ・・・コツ・・・コツ・・・
足音は、徐々に近付いてくる。
急ぐわけでもなく、一定のリズムで。
陽子は、自分の鼓動のリズムとその足音のリズムがシンクロしてるような気がした。