わがまま姫♀



それからしばらく歩いてたら、おもむろに田辺が立ち止まった。



「お前はここにいろ」

「え」

「ここにいて、先にお前を見つけた方とデートでもしとけ」



それだけ言うと、田辺は迷路の先へと進んでいく。



「………」



田辺の足音がしだいに小さくなっていく。



え、あたし置き去り!?



こんな暗いところに1人?!



無理だ、無理無理!



迷路は暗くて、先も後ろもあまり見えない。



でも流を信じる。



絶対先に来てくれるよね。



だって、あの流だもん。



アイツと初めて会ったときは、確かに最悪だった。



舌打ちされたのを、今でも覚えてる。



思い返したら、腹立つことの方が多いけど。



だけど、流のちょっとした優しさとか、たったそれだけでなんかどうでもよくなるんだよ。



不思議だよね。



あたしが単純なだけなのかな。



今即答で、「うん」って答えたやつ、ちょっと出てこいよ!



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