わがまま姫♀
「ねぇ、今…」
「俺には聞こえない」
………。
あぁそう。
なら空耳かな。
いっそのこと、そう思い込みたいよ。
しばらく聞くことのなかったあの声なんて。
「姫央さーん!」
再び聞こえる声。
それは幻聴というには、はっきりしすぎていた。
あたしも流も、構わず歩き続ける。
“ガチッ”
「ひっ…!?」
背後から腕を掴まれた。
「姫央さん、なんで無視するんですか?」
恐る恐る振り返ると、いつもの笑顔の津戸がいた。
「…津戸」
「…ちっ」
背後で舌打ちが聞こえたよーな…?
「お久しぶりですね。風邪はもう、大丈夫なんですか?」
それ、結構前だからね。
「…うん治った。心配してくれてありがとう。じゃっ!」
“ガチッ”
振り返って去ろうとするあたしの腕を、津戸はさらに強く掴んでひき止めた。