トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -
01.ケーキ男との出逢い
「谷口、このままじゃどこの大学も受からないぞ。もうすぐ高3だというのに受験生だという自覚はあるのか?」
「は、はい……重々承知であります」
放課後。
皆が慌ただしく部活に行ったり、帰宅しようとする中、あたしは職員室に呼び出されていた。
そして、校内でも厳しいと有名な数学教師“山本恵司”に説教されている。
「部活に打ち込むのはいいが、文武両道を心掛けるように!」
「はい……わかりました」
ようやく長い長い説教が終わった。
時計を見ると既に2時間が経過していた。
「嘘でしょっ!」
ダッシュでテニスコートに走る。
あのハゲじじい、何が文武両道よ!
これじゃ部活に遅れて練習出来ないじゃない!
――あたし、谷口セツナはテニス部の副部長をしている。
悔しいけど、確かに山本が言うようにテニス中心の日々を過ごしすぎたせいで、勉強に掛ける時間が極端に減少していた。
だけど、部活も今年で引退。
最後くらい、部員の皆を全国大会に導いてあげたい。
そのためなら、勉強なんてどうでもいい。
それに、受験勉強なんか大会が終わってからでも充分間に合うもの。
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