トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -
全力ダッシュでコートに来たものの、既に練習は終わっていた。
そう言えば、もうすぐテスト期間だったっけ。
「皆、勉強熱心よね」
シーンとした空間に自分の声だけが虚しく反響する。
あたしは軽く壁打ちをして、帰路についた。
“焦りはない”なんて言ったら、嘘になる。
勉強もテニスも思うようにいかなかった。
このままでいいのかな、なんて……たまに考え込んじゃうけど、今はそんな暇もない!頑張らなくちゃ!
首を横に振って、止まっていた足を再度動かす。
ぐぅーーーー。
……お腹すいた。
あたしはクルりと方向転換して、お気に入りのカフェへと向かった。
白を基調とした壁に、そこに掛かる色とりどりの鉢植えと花々。
ダークブラウンのお洒落なドアを開けると、チリンチリンとドアベルが鳴った。
「セツナちゃん、いらっしゃい!」
「えへへ。いつものちょうだい」
「あいよ!カレーね。ちょーっと待っててな!」
すっかりカフェの店員のおじさんともこの通り、顔見知りになってしまった。
そのくらい、ここは落ち着く空間だった。
大好物のカレーライスも、サービスで大盛りにしてくれるしね!ここ、重要だわ。
立地が悪いせいか(良く言えば、隠れ家的な場所なんだけど)お客さんも殆どいない……
はずなんだけど……
今日は、違った。