トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -
08.コイバナ

「谷口さん……起きて、谷口さん」


あたしはその穏やかな声音で目を覚ました。


「あ……丘野くん」


って、顔が近い。

机に突っ伏していた顔を上げると、目前には整った顔。

あたしは驚いてズザザッと椅子ごと下がる。


――彼は同じクラスの丘野ケイ。

顔のパーツは整っているし、勉強もよく出来て真面目で、学級委員長なんかもしている……が、気弱で臆病な性格と黒縁メガネにひょろっとした体系という地味さがネックとなっていて女子からの人気はいまいちだった。

でも、噂では隠れファンクラブがあるとかないとか。


「起こしてごめんね。でも、ずっと寝ていたから風邪引いちゃうかと思って」

「えっ、ずっと?今、何時?」

「もう6限目終わっちゃったよ」

「ろ、6限目が……終わった……?」


しまったー!

昨日殆ど眠れなかったからって、流石に寝すぎてしまった。

イ、イビキなんて掻いてたらどうしよう……!
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