トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -

放課後、無事居残りが終わり、誰もいないコートで少しだけテニスの練習をして帰路につく。

“あの日”から、少し回り道になっちゃうけど、カフェの前を通って帰るのが日課になっている。

少しの期待を胸に、今日もカフェの前で立ち止まり、窓から中の様子を伺う。

……いない。

やっぱり、そう簡単には会えないよね。

あの日は“珍しくノー残”って言ってたし、きっとお仕事が忙しいんだろう。

って、あたしどれだけあの人に会いたいのよ。

別に、惚れっぽいわけじゃない。

ただ、意味深なこと言われたから、ちょっと気になってるだけ。

それに、今日のことも文句言ってやらなきゃならないし……

なんて、誰に対して言い訳してるんだろう。


「そうよ。別に、会いたい訳じゃないわ」

「誰にだよ?」

「へっ?」
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