おかしな二人


凌は、感慨深げな顔をあたしに向け、懐かしむようにその目を緩める。

あたしは、そんな目で見られていることになんだか居心地が悪くなり、意味もなく並ぶボトルに視線を彷徨わせた。

少しそうしていると、凌が空のグラスを手に持ち立ち上がる。
そのままあたしを残してカウンターへ行くと、岸谷さんから新しいグラスを受け取り戻ってきた。

「ちょっとー。これからひと悶着あるっていうのに、飲んでる場合?」

グラスに満たされたアルコールを見て、あたしはソファの背凭れに呆れて倒れこんだ。

「ひと悶着あるから、飲んでるんじゃないか。素面で修羅場なんて、無理」

無理、って。
我儘な子供でもあるまいし。

あ、もともと我儘な子供と言うか、いじめっ子なんだよね、凌って。
落ち着いてグラスなんか傾けているから、すっかりその事忘れてた。


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