おかしな二人


「興信所なんかに依頼すれば、探し出すのなんて容易いんだろうけど。俺、自分の力で探し出したくってさ」

二杯目のお酒を傾けながら、昔話の続きをしだした。

「あんな風にオヤジと喧嘩して、家を飛び出して。明は、あの時一緒には行かない、と言ったけど、無理にでも連れてくるべきだったって、ずっと後悔してた。だって、あんな親父の傍に、まだちゃんとした判断もできない未成年の明をおいていくなんて無責任過ぎたし、なにより、心配だった。けど、俺もオヤジに似て頑固だからさ、一度行かないって断られたのに、女々しく何度も一緒に行こう、なんていい出せなくてな。結局、意地を張り続けて何年も過ぎちゃったよ」

凌は、照れくささで後悔を隠すように、グラスを顔の前に持って行く。

その液体を眺めていれば、あの頃に戻れるんじゃないか、とでもいうように、そこに映し出される歪んだ世界を見つめていた。


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