おかしな二人
「コートをお預かりします」
「ありがとう」
岸谷さんへコートを手渡すと、凌の顔を確認するように見たあと、あたしの方へ視線をよこし、微笑を向ける。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
あたしは、あまりに綺麗なその人を目の前に、つい言葉がつっかえる。
「座ってもいいかしら?」
嫌味の全く感じられない物言いで、奈菜美さんは、あたしがさっきまで座っていた対角線上のソファへと腰を下ろす。
少しすると、さっきコートを引き取って一度下がった岸谷さんが、香り立つコーヒーを人数分用意してテーブルへと置いていった。