おかしな二人


まさか謝られるなんて思ってもみなくて、あたしは言葉が続かない。

だってあたしの予定では、前回同様、すったもんだのごっちゃごちゃで、平手だの、手切れ金だのを覚悟していたのだから。

なのに、そんな風に謝られてしまったら、どうぞ、どうぞ、凌とこれからも末永くお幸せに、と言いたくなってしまう。
なんなら、ウエディングプランナー並みに、教会の用意から披露宴、二次会のご提案までもいたしましょうか? みたいな。

「ごめん……」

あたしが暢気な思考でいると、悲痛な表情で凌がまた謝り頭を下げる。
まるで、凌のほうがふられたみたいな顔だ。

そんなに辛そうな顔をするくらいなら、別れなければいいのに。
ずっと、一緒に居たらいいのに。
どうして、別れなきゃいけないんだろう……。

二人を見ていると、あたしの方が辛くなってくる。
これは、全部お芝居なんだと、ばらしてしまいたくなる。



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