おかしな二人


「せやから……あれや。こう……電柱の傍で、ぎゅっと……」

水上さんが、口を濁すように言う。

ぎゅっとっ、て。

「あっ!」

あたしは、つい声を上げてしまった。

水上さんは、凌と抱き合っていた事を訊いているんだ。
正確には、無理矢理抱きしめられていた、なんだけれど。

ていうか、それについてはあたしの方が知りたいくらいなんですよね。

「わかりません……」
「は? わからんこたぁ、ないやろ。抱きあっとったんやから」

今度は、露骨な発言か。

「でも、本当に、わからないんです……。二人でお店を出て、凌がタバコを吸って、あたしが早く帰らなきゃって思ったときには、あんな事に……」
「ほんまかいな」

そんな事あるわけないだろう、とでも言うように、水上さんがアホらしっ、と零す。


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