おかしな二人


「アホくさっ。嘘もなにも、俺は一人やって」
「……それ、マジですか……」

あたしは、なおも疑いの眼差しで訊ねる。

「俺が一人じゃ、おかしいんか……」

睨みつけるように、有無も言わせぬ表情。

「いえいえ。とんでもないですよ、はい」

恐くなって、つい敬語になる。
調子に乗りすぎた。

「本当に一人なんですねぇ」

あたしは、感心するように、へぇ。なんて洩らした。
あたしの、へぇ。に、水上さんはなんだか罰の悪そうな顔をしている。

人気のミュージシャンが独り者だとばれてしまった事が、ちょっぴり恥ずかしいとでもいう感じだ。

でも、ミュージシャンだって一人の男ですからね。
彼女が居る時もあれば、居ない時もあって当然ですよね。

あたしなんかは、ずーと一人もんですけどね。
って、そんな事訊いてないか。

とにかく、変に勘ぐり過ぎました。
すんません。


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