おかしな二人
ズカズカと近づいてくると、こっち向けや! とあたしの腕を取り、無理矢理に自分の方へと体を向かせる。
「大切な人ってなんやねん! 俺に女がおるって言いたいんか? それなら明の勘違いやって、前にも言うたやないか」
「だって、あれ……」
あたしは、泣きそうなのを必死に我慢しながら、ソファの上の小袋を指差した。
「あれ、誰かに上げるんでしょ? あんなに真剣に選んで。大切な人が居るんでしょ? あたしなんか構ってないで、早く渡してきてあげたらいいのに」
堪えていた涙は、ギリギリだった。
あとほんのちょっとの衝撃で、またさっきみたいに止まらなくなるだろう。
「せやな」
溜息とともに、肯定の言葉を告げられる。
その言葉を自ら引き出したくせに、いざ言われると苦しくてしょうがない。
涙の塊が今にも溢れ出そうと視界を歪ませる。