おかしな二人
『……明』
「話し、しようと思って……」
スピーカーに向って言うと、今降りて行く、と言ってインターホンが途切れた。
しばらくすると、薄手の上着を羽織った凌が、少し俯き加減で現れた。
特に気合を入れて着飾っているわけでもないのに、その洗練された姿は、やはりモデルという仕事をしているだけのことはある。
「……ここでもいいか?」
そう言うと、視線をあまり合わせないまま、エントランスホールに設けられている談話席へ向かう。
部屋での話し合いを避けた凌。
その気持ちは、こんなあたしにでもわかる気がした。
きっと、凌も同じ気持ちでいてくれるはずだろうから。
三つあるテーブルには、どれも向かい合うように二脚の椅子があった。
凌は、大きな窓の近くにある席に座る。
向かい合うそのテーブル席に、紙袋を膝の上で抱えあたしも腰掛けた。
ホールは外気をしっかりと遮断し、緩く暖房も効いているため寒さは感じない。
けれど、大きな窓から見える外の景色は、冬枯れした木々が外気に煽られ、ヒューヒューと小高い音を立てている。
寒々としている外の景色を見ていると、これから話し合う二人の気持ちを硬く閉ざしていくようでならない。