おかしな二人
思い立ったら、吉日。
徐にキッチンへ向い、多めに作っておいた御節を大きめのタッパーに詰めて手提げの紙袋に入れた。
そして、いつまでも賑やかにしゃべり続けているテレビを消し、コートを引っ掴んで外へと飛び出す。
電車に乗り、何をどう言えばいいのかを必死に考えながら、凌の住むマンションを目指した。
辿り着いたマンション前で、一度大きく深呼吸をし気持ちを落ち着かせる。
思い立ったら、なんて走り出したけれど、興奮状態のままじゃ、ちゃんと話し合うこともできないだろうから。
電車の中で色々考えをめぐらせたけれど、最終的にはどれも同じ答に行き着いた。
あたしは、このさきもずっと凌と家族でいたい。
それを胸に、十六階辺りの窓を見上げてみた。
けれど、凌が在宅しているかどうかはよく分からない。
もしかしたら、英嗣のように凌も年内一杯は仕事なのかもしれない。
そうなると、ここまで来てしまったけれど、逢えない可能性もある。
それでも、電話で済ませられるようなことじゃないのだから、こうしてやって来たのは間違いじゃない。
留守なら留守で仕方ない。
戻ってくるまで待とう、そういう心積もりでエントランスに踏み込み、部屋番号をプッシュする。
数秒後、驚いたような凌の声が聞こえてきた。