花火
 

カフェラテが半分くらいになった頃、男の人と女の人が数人でコーヒーショップに入ってくるのが目に入った。


…………うそ……っ!



「っ!!」



声が出そうになった。


私の目に写ったのは、


……せ、先生!?


だったから!


レジのところでコーヒーを注文しているのはまさに先生だ。


まさか会えるなんて思わなかった私は動揺してしまっていた。


うっ、嬉しいけど、出ていくわけにもいかないし……隠れておくしかないよね……。


こういう時に、私が子供じゃなかったら……と落ち込んでしまうんだ。


考えても仕方のないことなのに。


私は身を潜めるように、持ってきていた本に目線を落とした。


……全く内容は頭に入らないけど。


意識が完全に背後に集中してしまっている。



「ここ空いてるよー!」



「!」



急に女の人の声が聞こえてきて、びくっと身体が跳ねてしまった。


先生たちは私の斜め後ろの席に座ったようだ。


……うっ、近いんだけど……バレないよね……?


私は心の中でビクビクしていたけど、その心配を余所に、特に何も起こる様子はなかった。

 
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