花火
 

「ヒロ、ホントに教師やってんだな」


「あぁ。“いい先生だ”って評判のな」



「ぶっ!嘘だろ、それ」



「マジだって!」



「大学の頃はちゃらんぽらんなヒロトが真面目に教師するとか、誰も想像もしてなかったよね!ていうか、その喋り方で授業なんてできんの!?」



「よゆー、よゆー」



「うわ。ぜってぇこんな教師に習いたくねぇ!」



あはは!と笑い声が聞こえる。


……“ヒロ”とか“ヒロト”って呼ばれてるんだ……。


自分が呼べない名前を普通に口に出している女の人に、少しヤキモチを焼いてしまった。


……そんな小さいことを気にしちゃうなんて、やっぱ私って子供だな……。


ていうか、先生がちゃらんぽらんだった……?


……信じられないんだけど……。



「あれ?ヒロ、タバコは?」



「あー、今持ってない」



「吸う?ほら」



「……貰おうかな。サンキュ。…………ふ~……、あー、うめぇ」



普段は聞かないような先生の嬉しそうな声に、心臓がドキンと跳ねる。


そんな感じでタバコ吸うんだ……。


……何か、知らない男の人みたい……。


先生が友達とどう接しているのかとかも私は全く知らないから、全てが新鮮に感じてしまう。

 
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