花火
 

「リンも田辺先生のファンなの?」



「えっ!?」



「女の子って田辺先生のファンの子多いからさ~。リンもそうなのかなって」



「えっと……まぁ……」



「そうなんだね!いい先生だからね」



「…………うん」



……頷いていいものか悩むところではあったけど、一度だけ受けた授業はわかりやすかったし、“いい先生”だと思う。


ただ、“悪い男”ではあると思うけど……


レノンとご対面~、みたいな日は来るのかな……?


……って、私は何を……!


勝手に妄想して、自分でツッコミを入れるとか、すっごい痛い子だし!



「リンっ!」



「えっ?」



「こっち、こっち!一緒に観ようっ?」



「……」



レノンが指差すのは、いつの間にかテレビに映し出されていた、冴えない男の子が主人公の、いろんな道具で悪い敵をやっつけていくアニメ。


小学生が観るような。


いや、私、そんな子供じゃないんだけどね……と思ったけど。


まぁ、いいか……。たまには。


私が無言でレノンの隣に座ると、レノンがすごく嬉しそうに笑い、頭を撫でてくれた。


……生まれてからずっと知らなかった、お父さんの温かさ。


パパっていいな、と思った。

 
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