眠る湖(シリーズ3)

それから7年後

○病院、個室、内
悦子がベッドに眠っている。
母恵と木村刑事が見守っている。

(悦子)「・・・・む」
悦子、目を覚ます。
恵、覗き込む。

(恵)「悦子、目が覚めた?気分は?」
(悦子)「大丈夫よ。とにかく、すごく疲れた」

木村、割ってはいる。手帳を見せながら、
(木村)「福井県警の木村と申しますが、ほんとうに
お疲れの所すみません。山本太一君は亡くなられました」

悦子、視線をそらせて、
(悦子)「そうですか」
(木村)「・・・・・」

(悦子)「山本君、一緒に死のうと言ってくれたんです。
二人で睡眠薬を飲んで湖に飛び込みました」
(木村)「・・・・・」
(悦子)「後の事は何も覚えてません」

悦子、木村を弱々しく見つめる。
(木村)「そうですか。山本太一君の部屋から日記が発見
されました。あなたを慕う言葉ばかりがつづられています」
(悦子)「・・・・・」

(木村)「事件前日の最終頁には、悦子さんと一緒に
死ぬんだという決意がびっしりと書き込まれていました」
(悦子)「・・・・・」

(木村)「覚悟の自殺だったんですね?」
悦子、視線を木村に移し、ゆっくりとうなづく。
(木村)「わかりました。ほんとにお疲れのところ
すみませんでした。ではお大事に。失礼します」

木村と山田、恵に目礼して去る。
恵、二人出て行ったのを確かめてから、
(恵)「ほんとうなの?悦子?」
悦子、目をつむりゆっくりとうなづく。

○タイトル
『それから7年後』

○タイトルバック
美しいもみじの山なみ。
山間の小都市を望む。

○スーパー、外
小さなスーパーマーケット。
車が数台止まっている。

○同、店内
山下が身重の妻絹江と買い物をしている。
カートを押す山下。
カートには食材が一杯。

(山下)「絹江、もうこれで全部か?」
(絹江)「まだあるわ。先にレジで並んでて」
(山下)「ああ」
絹江、奥へ去る。
< 6 / 15 >

この作品をシェア

pagetop