蜜事は研究室で
「こんにちはー」



カラカラ、音をたてながら研究室のドアをスライドさせる。

中で何やら『SHIBA2号』をいじくっていたシツチョーが、「おー」と顔を上げた。



「よし、今日も迷わずに来たな」

「そりゃ……市松一緒ですし、もう2ヶ月近く経ちますし」



ごにょごにょ言い訳めいたことを口にするわたしに、フッとシツチョーは笑う。


……ああ、ナシ、今のナシ!

意地悪な笑い方なのに、ドキン、とか胸が鳴ったの、それナシ!



「まあ、いい。……ご苦労、市松」



シツチョーの「ご苦労」のひとことで、市松は自動的に電源が落ちるようになっている。

彼はパチリと目を閉じた市松の髪を撫でて、研究室の隅に移動させた。

ホコリ避けのために、紫色の布を掛けることも忘れない。



「………」



いくら、ロボットでも……自分の作ったものは、本当に大事にする人なんだよねぇ……。

えっと、うん。普段傍若無人でも、そういうギャップが、すきになってしまった要因のひとつ、でもあるんだよなぁ……。


──わたしも、この人に大事にされたいって。

そう思ってしまうのは、やっぱり無謀なことなんだろうか。
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