蜜事は研究室で
最高傑作な発明品
ごちゃごちゃと発明品やら実験道具やらで、一層狭く感じる室内。

そのはしっこにある椅子に腰掛けて、わたしはどんよりとしたオーラをまとっていた。

ちなみにこの部屋、なぜか冷蔵庫やパイプベッドまで置いてある。生活感ありすぎでしょ。



「……よし、シーナも来たし……始めるか」



いつの間にかワンコロボットをしまったらしいシツチョーが、そう言って自分のかばんをゴソゴソしだした。

何気なくその様子を見ていると、かばんから出てきたのは綺麗な細工が施された、小さめのビン。

そしてそれを持ったシツチョーと、目が合った瞬間……本能的にわたしは、今すぐにこの場から逃げ出したい衝動にかられた。



「ッ、」

「まあ待て、落ち着きなさいシーナ」



猛然とドアにダッシュしようとしたわたしの腕を、にこやかな笑みを浮かべた彼ががしりと捕まえる。

振り返ったわたしの頬が、ひく、と引きつった。



「……しつちょぉ」

「ん?」

「あの、わたし……嫌な予感しか、しないのですが」



ダラダラと冷や汗を流しながら、『だからこの手を離してください』と言外に込めて、わたしは彼の目を見つめる。

対するシツチョーは、にーっこり、それはそれは愉快そうに微笑んだ。



「それは心外だな。俺は、楽しい予感しかしていない」



……ああ、もう、逃げられないのですね……。
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